インタビュー

プロデュース・指揮:河合 尚市

冨田先生とのご縁は?


私は、冨田先生と同じく尚美学園大学で教鞭を執っていますが、その関係もあって冨田先生の『ジャングル大帝』(60分ほどのオーケストラと語り手による音楽物語)を指揮させていただく機会を得ました。その公演での指揮をご評価いただき、その後、2012年に初演された『イーハトーヴ交響曲』の、2013年再演ツアーでの指揮者にご指名いただきました。ちなみに、その時の渋谷Bunkamuraオーチャードホールでのライブ録画がブルーレイディスクで販売されています(日本コロムビア)。『イーハトーヴ交響曲』が映像として残されているのは、現在ではこの一枚だけですので、興味のある方は是非ご覧いただきたいです。(※本ページ下部にダイジェスト映像を紹介しています)
その後もずっと親交を深めさせていただき、2015年に『イーハトーヴ交響曲』北京公演でご一緒させていただいたことも貴重な経験でした。

このコンサートの聴きどころは?


まず、老若男女皆さんにお馴染みなのが、NHK『今日の料理』のテーマですね(笑)。「タンタカタカタカ タンタンポコポコ」と、3名のマリンバ奏者で演奏されるあの名曲を再現します。
そして、先生が書かれたNHK大河ドラマの全5作品一挙演奏というのも聴きどころです。5作品をひとつのコンサートで全て演奏したという例はこれまでになかったようです。冨田先生といえばすぐにシンセサイザーのことを思い浮かべる方も多いかと思いますが、冨田先生の“作曲家”としての懐の広さを、大河ドラマファンならずとも感じていただけることと思います。

児童合唱も活躍する演目がいくつかありますね


はい、大活躍です(笑)今回は地元の川越少年少女合唱団のご協力をいただいて素晴らしい児童合唱とともにステージを作ることができています。『イーハトーヴ交響曲』はもちろんのこと、『鳳来寺山のブッポウソウ』にもぜひご期待ください。ピアノ伴奏による本曲の演奏機会は多くありますが、今回の演奏会のために特別に用意した新しいオーケストレーション版での初演をお聴きいただきます。また、舞台上の児童合唱に加え、2階客席ににも児童合唱を配置して、山谷に響くコダマの遠近感をオーケストラと共に演出してみたいと考えています。

サラウンドで音源を鑑賞するという試みも面白そうですね


オーケストラを使った演奏会にもかかわらず、オーケストラは演奏せず「録音された音楽を鑑賞する」という荒技企画に取り組みます。
その理由は、冨田先生がシンセサイザーを駆使して録音されたオリジナル音源を、尚美学園大学冨田研究室で教えを受けたエンジニアの手により、冨田先生が終生拘っていたサラウンドを体験していただきたいと考えたためです。今回のために用意した無指向性の特殊なスピーカーをホール1階の8箇所に配備し「響が回る、響が動く」サラウンドを最良の環境で再現することを試みます。

このコンサートを通じて伝えたいこととは?


私は、冨田先生の作品を上演する度に先生の「音」への様々な強い拘りに共感しました。そして先生の音楽を一人でも多くの方に伝えたいと強く思いながらここまでやってきました。
昨年9月に私の周囲の条件が一つに集まり、「来年9月6日に演奏会をしなさい」という天の声を聴き、11月には4名のスペシャリストによる製作委員会を組織してコンサートの準備を重ねてきました。
この演奏会への想いを幾つかお話ししましたが、「冨田勲の音楽」を会場でお聴きいただければ、私が何故これほどまでに冨田作品に傾倒するのかの答えを共有していただけるものと確信しています。

【参考】

『イーハトーヴ交響曲 Blu-ray』ダイジェスト映像
河合尚市 指揮/東京フィルハーモニー交響楽団
初音ミク(バーチャル・シンガー)
ことぶき光(エレクトロニクス)/梯郁夫(パーカッション)/鈴木隆太(キーボード)/
慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団、同OB 合唱団(合唱指揮:下河原 建太)/
聖心女子大学グリークラブ/シンフォニーヒルズ少年少女合唱団(児童合唱指揮:宮本益光)
[映像システム企画開発]クリプトン・フューチャー・メディア株式会社
(2013年9月15日 Bunkamuraオーチャードホールでのライヴ収録)